内部資料:アーカイブ
幸あれかし
昔々、山あいの小さな村に、「サチ」という名の少女が住んでいました。サチは誰にでも優しく、村人たちのために尽くす心の美しい少女でした。村は平和でしたが、ある年、大きな災いが村を襲いました。激しい嵐が何日も続き、田畑がすべて流され、村の作物は壊滅的な被害を受けました。村人たちは飢えと寒さに苦しみ、希望を失いかけていました。そんな中、サチだけは村のために何かできることはないかと考え、村人たちを励まし続けました。
ある夜、サチは村の小さな神社に足を運び、ひとり静かに祈りを捧げました。「どうか、この村に光をお与えください。村のみんなが幸せに暮らせるように、この嵐を止め、平和を取り戻してください。幸あれかし」と。
その夜、サチは祈りながら心の中で決意しました。もし自分が犠牲になることで村を救えるのなら、喜んでそうしようと。彼女の願いは純粋で、村人たちへの愛に満ちていました。
翌朝、村には奇跡が訪れました。長く続いた嵐はぴたりと止み、空には美しい青空が広がりました。田畑には再び緑が芽吹き、花が咲き誇り、村人たちは大喜びしました。しかし、サチは戻ってきませんでした。彼女は神社で静かに息を引き取っていたのです。
村人たちはサチの犠牲に深く感謝し、彼女の名を永遠に語り継ぐことを誓いました。村は再び豊かになり、サチの祈りによって救われたのだと信じていました。
ところが、しばらくして、村の外から奇妙な噂が届きました。サチが祈りを捧げた翌朝、村の外では恐ろしい災いが起こり、かつて村を襲った嵐よりもさらに激しい嵐が他の村々を襲ったというのです。田畑は流され、家々は倒壊し、多くの人々が家や食べ物を失いました。
村人たちは不安になりました。「私たちの村は救われたが、その代わりに他の村々が苦しんでいるのではないか?」と、長老たちはひそひそと話し合いました。しかし、誰もこの不思議な出来事の真相を知ることはできませんでした。
サチが最後に祈りを捧げた場所には、一本の桜の木が立ち、その木は毎年、村に光が戻った日になると満開の花を咲かせました。村人たちはサチの犠牲を忘れることなく、彼女の祈りに応えて村を再興しました。

(LV4)